議論について

翔ソフトウェア (Sho's) - オブジェクト指向 - コミュニケーション パターン - 議論パターンを読んでて「物足りないなぁ」と思ったのは、どうして議論のアンチパターンに陥ってしまうか、というところに踏み込んでいない点。たいてい、はた迷惑な議論の仕方って言うのは、裏に別の目的があるわけで、それが議論をダメな方向へと引っ張っていくのだ。そこでちょろっと、議論の目的パターンというのを考えてみたですよ。

たいていの場合、目的は答えを出すことではない

たいていの場合、意見の違いというのは各人が暗黙的に置かれている前提条件の違いに起因する。そういうところを明らかにしていくことのほうが議論の効用としてはむしろ多い。ネット上の議論で目的がはっきりしているものはあまりないが、もし議論の目的として掲げるなら、どちらかといえば暗黙の前提条件を明らかにすること、のほうがいい。

文脈の欠如したコメントには大した価値はない

若い世代の感覚とは裏腹に、コメントの価値は「誰が言ったか」「どういう状況で言ったか」によって大きく左右される。たとえば、文学者の言う「宇宙」と物理学者の言う「宇宙」は意味が違う。

一番重要なのは信頼と礼儀

たいていの場合、議論に参加する人間にはそれほど馬鹿はいない。だから、くだらないように見えるコメントであっても、実はすごい重みを持っているものもあったりする。特に、それが一生懸命に伝えようとしている内容ならなおさらだ。
どんな人間であれ、一個の人間が誇りをかけて他人に伝えようという意見には価値がある。もちろん、同意するというだけでなく、そんな意見を認めることはできない、という意味でも。
同意でもなく反論でもなく、ただ笑うことで相手の意見をねじ伏せるような、そういう態度こそが最も失礼であるとともに、相手を議論するに足ると思っていない時点で、そもそも信頼関係に欠けている。
信頼関係の欠けた議論は、《揺らぎのない語の定義などありえない》どころか、悪意を持って語の意味をもっともふさわしくないものに置き換えるという、改竄さえやってのける。そのような議論から得られるものはほとんどない。

メジャーになりたい

こんなこともわからないなんて、お前らはみんな馬鹿だな。え、俺はどうかって? 俺が今何歳だとか、どんな職業かとか、議論に関係ないだろ。

  • お前はまだ学生だったりすることが多いですね。
  • 記名の場合が多いですね。
  • わたくし達のたのしい議論を、お前がメジャーになるための踏み台に使わないでください。自己顕示欲は自分の Web サイト内で好きなだけ消化してください。
  • そもそも、間違えないこと、物をよく知っていることがメジャーになるための必要条件と思ったら大間違いです。
  • こういうやつがひとりいると、周りのヤツは《俺は間違えない》としか言わないようになります。

大したことはないね

お前はちょっとだけ(ほんとにちょっとだけだよ?)名前が売れてるけど、俺のほうが本当は実力があるんだ。ああ、世の中ってのは本当の実力を分かってないなぁ。みんな馬鹿ばっかりだ。

  • お前も学生だったりすることが多いですね。
  • 匿名の場合が多いですね。
  • お前はほんとは《メジャーになりたい》んですね。でも、なれないから文句を付けたいんですね。
  • だから、他人の足を引っ張っても、お前の駄目さ加減はどうにもならないんですよ。

俺が悪いわけじゃない

そんなことを認めたら、俺が何もしてなかったように思われるじゃないか。

  • お前のことを責める気は毛頭ありませんよ。っていうかどうでもいいです。
  • お前、ちょっと神経質過ぎではないですか。
  • ああ、でも、場合によっては、気の利かないわたくし達のほうが悪いこともあります。

ごめんなさいって言うまでやめるつもりはないよ

何度も何度も言い逃れをしているけど、俺は許さないよ。

  • お前のご立腹には興味がありません。
  • 楽しい議論さえしてくれるなら、ちょっと前に何を言ったかどうかなんて大したことじゃないです。
  • というか、《揺らぎのない語の定義などない》以上、そう簡単に他人の意見を間違いとか言い逃れとか決め付けることは不可能ですよ。
  • それなのに決め付けちゃうお前は、《正しいのはどちらかだけ》って考えてはいないですか。

正しいのはどちらかだけ

お前の反論、ぜんぜん意味分からない。馬鹿なんじゃないの?

  • お前の意見が正しいのは分かりましたよ。
  • しかし、相手の意見が正しいのも分かってあげられるようになりましょうね。
  • それができないお前のほうが、どっちかっていうと馬鹿ですよ。

俺は間違えない

俺の言っていることは間違いないよ!間違ってるって証拠を出してみろよ!

  • お前の言っている内容はトートロジーですよ。
  • さもなきゃ、悪魔の証明という奴です。
  • お前は反証可能性というやつを勉強してくるといいですよ。*1
  • 《おもしろい議論にはアブダクションが必要》なんです。
  • まわりに《メジャーになりたい》やつがいることが多いです。そいつに突っ込まれたくないので面白くないことしか言えない。だから、まずそいつにたのしい議論のしかたをご理解いただくことが先決です。

*1:ここで反証主義に対する批判を持ち出してくる子は、イイコだから黙っててください。はいはい、お前らのほうが正しいですよ。でも、論理実証主義反証主義も知らない子にそれを教える意味はあるでしょう。

あらゆる状況で利用可能な結論が欲しい

それじゃ○○のときはいいけどそれ以外のときに使えないから駄目だよ。
それに、△△って言葉の定義がはっきりしてないから正しいかどうか判断できないよ。

  • 議論から、絶対確実、誤りのない結論を導き出そうとしているところが間違いですよお前。そんなものが世の中に存在しないこと(あっても役に立たないこと)をそろそろ学ばれてはいかがでしょうか。
  • なんにでも例外があるんですよお前。それをいちいち「○○は××だ。しかし例外はある。」と明示してもらえれば満足なんですかお前。
  • どうしても気になるんだったら、「例外として切り落とした部分の与える影響が、無視できない大きさになりそうなんですがお前らはどう思われますか?」という聞き方をすればいいんじゃないかと思いますよお前。

学生

議論の前提になる、実社会でのさまざまな束縛を無視して発言する。議論に暗黙の前提条件が存在することを理解しない(自分が問題に直面しているわけではないので、《あらゆる状況で利用可能な結論が欲しい》と考える)。

  • ええと、現代社会の中でお前らが置かれた、中途半端な、厳しい状況は理解しているつもりですよ。つもりですけど。
  • 社会とほとんどかかわりを持たないような議題であればそれでもいいですよ。でもお前、この話はそういう話じゃないでしょう?

被差別者

議論の中心を、自分の興味のある方向にずらす。

  • わかりますよお前。日常的につらい状況に追い込まれているんですね。
  • でも、だからといってなんでも許されるわけじゃありません。わたくし達とたのしい議論をする気がないなら出て行っていただけますでしょうかお前。

職業

ある事柄についてはまったく論理的ではない発言を繰り返す。ある事柄については自分と異なる仮定さえ受け付けない。ある事柄については議論ではなく信念を繰り返す。

  • そうですよね。お前は職業的にそういう発言しか許されてないんですよね。
  • 心中お察しします。
  • でも積極的に出てこられると邪魔ですよお前。
  • 自分の言っていることを心の底から信じてたりすると特に邪魔です。
  • お前の信念には特に興味がありません。