倫理と法律

倫理というのは法律と似ている。どちらも万人に適用される規則だ。倫理は善悪の評価基準であるし、法律は罪と罰の評価基準である。しかし異なる部分も多い。倫理は個人の価値観の一部であり他人に押し付けることはできない。法律は社会の一部でありその権限の及ぶ限り適用される。倫理では善悪を主張する以上のことができない。法律では社会的な拘束力をつかって他者に苦痛を与えることができる。宮台が主張しているが、現代社会の問題のひとつに、多数派が自分たちの倫理を法律にすることで少数派に押し付けようとすることが挙げられる。

また、倫理は人間が生まれつき備えている能力と密接に関連している。俺たちは「公正さを検証する能力」、つまり「誰かズルをしていないだろうか、と検証する能力」を生まれながらにもっている。倫理や公正さをどうやって獲得したのかについては道徳性の進化論とかを参照して欲しい。心理学の実験で、単純な論理の検証を、無機質な数字と記号で扱った場合と倫理的な事柄で扱った場合とで比べたものがある。もちろん正答率が高かったのは倫理的な事柄で扱ったほうだ。

オタクとDQNはまったく異なる倫理観を持っている。オタクの倫理観は社会で合意の取れたいわば教科書的で社会的なものだ。一方DQNの持つ倫理観は果てしなくオレ理論であり反社会的だ。オタクは自分の倫理が倫理でしかないことを知っている。つまりオタク自身にとっての善悪を主張するだけしかできない。一方、DQNは自分の倫理が倫理であることを知らない。むしろ法律だと考えていて、罪を犯したものは罰(暴力)があってしかるべき、と考えているフシがある*1

倫理には行使できる強制力がない。だが生まれながらに持っているものであり、捨てることができないものなのだ。

*1:たとえ法律に反していたとしても、自分で罰を与えるのは自力救済の禁止原則に違反してるんだけどさ