暴力について

ピンカーによれば、暴力というのは次のような条件が揃った時に、特に発生しやすいという。

  1. 権力をもった統治機構がない
  2. 貧富の差が激しい
  3. 財産を簡単に奪われてしまう

完全か不完全かはともかく、経済においてはこれらの条件に対してそれぞれ対策が練られている。政府は経済に対して権力を持っているし、また富の再配分を行うことで貧富の差が極端にならないように操作してもいる。そして法により各々の財産を保護している。

ところが、恋愛においては上記の三つの条件が全て当てはまる。恋愛について権力を持つ存在はいない。政府はこのような個人的な領域に立ち入ることはできないし、親や世間も恋愛を左右できるだけの権力を持たない。ネットやマスメディアを通して個人の活動領域がグローバル化し、恋愛に対する倫理観が風化することで起きた自由化が、貧富の差をますます拡大させている。そして自由恋愛というイデオロギーは恋愛という財産をまったく保護しない。